第4章 Episodes.錦戸:女好きにも理由がある
寮に入って家事をしていると、
2階に行っていた錦戸さんが
スウェット姿で降りてきた
「なあなあ~、俺のタオル知らん?」
「タオル?知らないけど。
洗濯に出したとかじゃないの?」
「いや、今日出そうと思っててん
けどな持ってきたはずやのにないねん」
おかしいな、って再び2階へ
「見てないよね、タオル」
櫻井さんが私を見る。
私も小さく頷く
「またかなー…」
小さく呟いて本を閉じ、
櫻井さんは携帯いじりながら
廊下へと出て行った。
話し声が聞こえるから
たぶん、生徒会長さんに、だろうか
また、とはどういう意味だろう?
「大丈夫、かな」
気にしつつも、
外に干していた洗濯物を取りに
パタパタ庭へ出た。
「外、暗いなぁ」
急いでしまっていると、
ガサガサと音がする
そこは茂みで
人が隠れたりできる場所
だれか、いるのかな
そして再びガサガサと音がする
怖くなって服を握りしめる。
「だれ、ですか!」
思わず裏返った声、
出てきた女性
ストレートの長い髪
茶色がかった髪の色
綺麗な、顔立ちをしている
ぱっちり大きな瞳で、
まっすぐ私を見た
「あ、の…」
「あなた誰よ」
敵意の込められたその言葉は、
まるで関係ない私にも
それはまっすぐ向けられていた
あまりの鋭い目つきにひるむ。
「まさか、亮の女?」