第3章 Episodes.相葉:笑顔の裏の崩壊
相葉さんは泣きじゃくっていた。
我慢なんかしないで。
助けて、って叫んでる。
だけど、
どうする術も私にはなかった
「…私は」
「いずみん、」
「私は幼い頃から、笑い方も、
泣き方も知らないまま過ごしてきました
その中で何度だって助けて欲しいと思いました
私なんかのトラウマは、
きっと相葉さんに比べてくだらないけれど、
つまり…あの、その…」
言葉に詰まって、
出て来た選択肢から
いろいろ考えて、選んだ言葉は、
「もう、いいと思います」
笑ってなくちゃいけない
そんな状況下に置かれた相葉さんの
心理状態なんて分からない。
もしかしたら、重たい過去を背負うよりも
ずっとずっと辛いのかもしれない。
泣くこともせず、
ひたすら傷を隠して笑っている事
知らなかった。
あんなに優しそうに笑って、
一生懸命、私を馴染ませようと
話しかけてくれた微笑みも
ずっと奥に、
悲しい気持ちがあったなんて
「家族が壊れるのは辛いです
私も気持ちは凄く共感出来ますから
でも、壊さないために
泣く事をやめてまで笑うことに、
何か意味なんてあるのでしょうか」
人間は単純な生き物だ
笑うことで楽しい、嬉しい、幸せを覚え
泣くことで悔しい、悲しい、つらいを覚え
怒ることで憎しみ、嫌悪感を覚える
彼は、今まで幸せだったのだろうか