第3章 Episodes.相葉:笑顔の裏の崩壊
「待ってて!今行くから」
そう叫んで走り出す母さん。
慌てた父さんも追いかけて、
車来ていないか確認して道路へ出た。
ぴょん、と僕に抱きついた。
えへへ、って可愛い笑顔で
「母さん、車の確認ぐらいしないと
轢かれちゃうかもしれないでしょ」
「まーくんに会いたくて、つい」
「ママ。ダメだよ」
「もお~パパまで~」
どうやら2人でデートしてたらしい。
そりゃ携帯見ないよな、って
少し微笑ましくなって
歩き出した時だった。
遠くから聞こえた危ない!の声に
バッと振り向いた。
車のブレーキ音、
クラクション音、
悲鳴を上げる声、
踏切の閉まる音、
すべてが嫌に頭の中に流れ込んで響いて。
「…かあ…」
母さんが、車に轢かれていた。
そう認識した途端に
腹の底から溢れ出るモノが
涙になって流れて。
父さんが見せまいと
慌てて俺に抱きつき視界を塞いだ。