第3章 Episodes.相葉:笑顔の裏の崩壊
バリィィン、
ガラスのコップが滑り落ちる。
「何やってんの兄ちゃん、
それ母さんのマグカップだぞ」
「やべ、叱られるよね」
「…父さんにね」
胸騒ぎなんかしなかった。
ただ、ちょっと、
血が出て来てざわざわしたんだ
夕方過ぎても母さんは帰らなかった。
料理がかなり苦手だからと
通い始めた料理教室は3時までだ
そっから1時間かかったとしても、
既に家に着いてるはず
心配になってメールをいれる。
「変、だよね。
母さん、メールはいつも
すぐ返すのに今日に限って遅い」
「話し込んでるだけさ、きっと」
父さんも遅かった。
休日だから母さんに付き添って
料理教室に行くと出掛けた
その父さんすらも帰らなかった。
この時、胸騒ぎがした
そして嫌な予感もした。
「そーた、父さんと母さんに電話して
僕は2人捜してくるから」
「う、うん。分かった
暗いから気をつけてね」
こんなの、ただの思い込み、
そうなって欲しいと願っていた。
必死に走り回った
料理教室は閉まっていて
誰もいなかった。
どこにも居なくて焦って
「まーくーーんっ」
遠くから聞こえたその呼び名に
振り向くと、
反対側の方に立つ母さんと父さん
「良かった」
ひと安心した。
やっぱり思い込み。
そう思って僕も笑顔で手を振った。