第8章 Episodes.泉森:愛と温もりと憎悪
そこで何があったのか、
ねーさんが何をされたのか、
真実は教えてはくれへんかったけど
怯えきったねーさんを見て。
何かを僕は悟った。
『ねーさん、帰ろう。』
縮こまって震えて俯いたねーさんは
ゆっくり顔を上げ涙目で僕を見た
フルフルと首を横に振った。
" 拒否 " を表していた
『なんで?帰ってご飯食べよ?
あそこで1人は寂しいねん僕』
『…』
それでも何かを言うことはなかった。
僕は初めてねーさんに拒絶されたんだ。
ショックで、手を引っ込めた。
『僕のこと、きらいなん?』
『…』
『僕なんかもういらん?』
『…』
『僕は大好きやで、ずっと』
僕がしゃがみ、目線を合わすと
ビクリと震え上がる。
背中に壁、
それでも逃げようとするねーさん。
『ねーさんおらんくなったら、
僕がこの世界で生きる意味なんてないねん』
『…っ』
『僕は、ねーさんのためだったら、
なんだって出来るで。ほんまや』
『…っ、』
『せやから帰ろう?』
『しょーちゃっ……!』
ぎゅ、と抱きつくねーさんを
僕も抱き締め返した。
痛々しいこの傷もアザも、
すべて抱きしめて消せたならいいのに