第8章 Episodes.泉森:愛と温もりと憎悪
おばさんはねーさんの扱いは雑だった。
交友関係も勉学も食生活も、
すべてに無関心で
兄さんだけを溺愛していた。
すでに居場所などなかったのだ。
『ママはね、仕事で疲れてるから。
お兄ちゃんのお世話も大変だから
私の相手は出来ないの。だから仕方ないの』
大丈夫だよ、しょーちゃん
とまた笑ったその笑顔は
その時から作られた笑顔に変わった。
小学校に上がる頃には
兄さんも海外から帰っていた。
ねーさんの事も可愛がっていて、
近所で有名な仲良し兄妹。
『、紹介するね
こいつはお兄ちゃんの友達』
そうして紹介されたのは、
『ちゃん。僕は君の
お兄さんの友達の長谷川結弦だよ』
結弦、彼は人気者だった。
兄さん曰く学校では
周りにいつも誰かがいて
彼をほっとく人はいないらしかった。
一人ぼっちのねーさんは、
アイツの笑顔を簡単に信じ込んだ。
『ちゃん…、あかんて、あいつ』
『なんで?しょーちゃん結弦くん嫌い?』
『ううん…。でも…』
『しょーちゃんもすぐ仲良くなれるよ!』
『そう…やんな、』
ねーさんが嬉しいならいっか。
僕もその時はうん、と笑顔で頷いた。