第8章 Episodes.泉森:愛と温もりと憎悪
あれはねーさんが小学生になる前。
兄さんは頻繁に海外に行っていたから
ねーさんとはあまり話したことがない
その分、帰ったら甘やかした。
ねーさんの母親はデキる女の人で、
仕事バリバリこなしていた。
だから家にはほとんどいなかった。
そんな中に突然、僕は放り込まれた。
僕のオカンもまた、家にいない人。
知らないお家に住むことになり
ビクビクしていた僕に
優しく微笑みかけてくれたんがねーさんやった
僕は昔からナヨナヨしていて
女の子みたいとよくからかわれた。
髪の毛も切らず伸ばしっぱなしだったし、
その頃は内気で人見知り。
だからこそ、ねーさんに
優しくされたら嬉しくて泣いた。
ねーさんの家はとても広かった。
なんでもある代わりに、
小さな子ども1人じゃ広すぎた
でもねーさんはいつも笑っていた。
たまに帰ってくるおばさんに
笑顔でおかえりと抱きついたとき
『邪魔よ。ママ、疲れてるの』
ドンと突き飛ばした。
「ちゃん…大丈夫?」
あわあわしながら駆け寄ると、
俯き泣くのを我慢するように唇を噛んでいた