第8章 Episodes.泉森:愛と温もりと憎悪
向かった先は、王子寮。
あれから日は経っていないけど
なんだか懐かしく思える。
ドアノブに手を伸ばした時、
「…安田?」
聞こえたその声に振り向けば、
ジャージ姿の二宮と大倉
僕の顔を見るなり血相変えて
バタバタ走り寄って来た
「寮母…は!?」
「…ねーさんは奪われた。
連れてかれて、僕の傍におらへん」
「は?」
「帰ったらそのまま捕まったんや。
僕にはどうにも出来へんかった」
険しい顔のまま。
二宮は僕を見つめていた。
大倉は力なくヘナヘナと座り込む。
「ちゃんと教えて。のこと」
「知ってどうすんの?助けんの?
中途半端な覚悟じゃ無理やで」
「助ける。」
二宮はまっすぐ僕を見た。
それは確かに覚悟を決めた目で。
ほんまに大丈夫やろかって、
少しの不安もありながら
僕はゆっくり頷いた。
「……お願いや、ねーさんを助けて欲しい」