第8章 Episodes.泉森:愛と温もりと憎悪
立ち上がり、部屋の扉を
荒々しく開いた。
その音に俯いた兄さんがこちらを向いた。
「…どこに行くんだ?」
「関係あらへん」
「関係ある。あいつの所だろう。
やめておけ、会わせてはくれないぞ」
「うるさい、関係ない言うてるやろボケ」
お前らなんか信用しない。
ねーさんが傷ついてるのも、
こんな判断をしてしまったのも。
僕が信じるのはねーさんだけ
だからアイツから助けんねん
あの日、お前らがアイツのためと
ねーさんを手放し見捨てた
そんな事なんか僕はせえへん。
『…………何度もうるさいな。
お前は迷惑という言葉を知らんのか?』
「うっさいボケ。どこおんねん」
『どれだけ邪魔すれば気が済むのだ
もうお前の役目は終わった。そうだろう』
「終わってへん。お前が決めんな
ねーさん、ねーさんを出せ」
『断る。』
ブツっと切られた電話からは、
虚しく通話終了の音が鳴り響いていた。
「…っねーさん…!」
ぎゅっと携帯を握りしめ、
止めた足を再び踏み出した