第7章 Episodes二宮:自分が帰る居場所には。
母親は俺を可愛がるように見せて、
実は俺なんてどうでも良い人だった。
父親は多くの仕事を手がける人だったから
それなりに忙しくて、休むひまもなく
家にもあまり帰っては来れないような人だ。
だから母親は家の中で1人寂しく、
俺を父親の代わりに
愛でて可愛がっていたのだ。
俺はそれなりに純粋だったし、
それに子どもだったから
母親が可愛い可愛いと言ってくれて
凄く嬉しかったし、
愛されてるんだと思った。
でも純粋なほど人はよく傷つくから、
父親が帰ってきた日には
母親は父親にべったりになって
俺なんか邪魔なようだった。
望まれていたのは跡取りである男であること
望まれなかったのは生まれてきたこと。
父親は仕事の事しか頭になかった。
だからベタベタする母親のことを
とても鬱陶しく思っていたらしくて
よく触られるのを拒んでいた。
帰ってきた日は父親は俺ばかり気にきかけるから
母親はそれを見て表情を歪ませ、
俺のことを嫌うようになった
俺はその事を知っていたし、
だからこそ父親に優しくされることも
褒められることも普通は嬉しいことなのに
喜べない、嬉しくないとモヤモヤしていた。