第7章 Episodes二宮:自分が帰る居場所には。
ヤスくんを見送ったあと、
1人家の中で家事を始めた。
増えた洗濯物が少しばかり大変だけど
「僕も手伝う!」
柊真くんが両手を広げた
一緒の悠汰くんがいないから
部屋で寝ているのかな。
「いいの?ありがとう」
「初めて外に出てん、僕!
今度兄ちゃんとお出掛けすんねん!」
楽しみやわ〜って
嬉しそうに笑う柊真くん。
そっか、ずっと部屋の中だもんね。
楽しみが増えて幸せなんだ
「悠汰くんも?」
「ううん、悠汰はもう少ししたら
病院に入院して病気の治療に専念すんねんて」
やから家で待機やな、
と寂しそうに言う柊真くん。
悠汰くん体が弱いって言ってたな
病院にもろくに行ってないって言ってたし、
この機会に治療して
元気になるのが一番いいのかもしれない
「元気になったらお母さんに会いに行く」
「2人のお母さん?」
「そう。その日までお金貯めて、
いっぱい話すのが僕の今の夢やねんっ」
「そっか、楽しみだね」
「ふふ。お姉ちゃんはないん?夢」
ニコニコ笑う純粋な目を、
私は何故かまっすぐ見られなくて
思わず一瞬だけ逸らした。
「…楽しく生きることかな」
「お姉ちゃんも病気なん?」
「ちがうよ!お姉ちゃんは元気」
「じゃあ!兄ちゃんと同じやな!
楽しく生きるのってええことやもんっ」
鼻歌を歌いながら、
タオルを干していく柊真くん。
そうだよね
いい事なんだもんね。