第3章 Episodes.相葉:笑顔の裏の崩壊
寮に着くとまずリビングへ。
そこに居たのは櫻井さん、
と呼ばれた好青年っぽい男の人。
にこっと微笑み立ち上がって
私の方へと歩み寄る。
「はじめまして、櫻井翔です」
初めて、だ。
私にはじめましてと優しくしてくれた人
「泉森、です」
「ここの寮母、すごく大変だけど
俺に出来ることなら協力するからさ。
これからよろしくね!泉森さん」
はい、と差し出された手のひら。
戸惑う私に笑いながら、
「握手だよ!あーくーしゅっ」
と無理やり手を握る櫻井さん。
「他の奴らは戻って来ないみたいだし
俺らだけでも歓迎会しようよ!ね、翔ちゃん」
「そう言うと思って買い出し、しといた」
ほら、と机に置かれた、
大きな袋が2つ。
「いっぱい食べよう!」
相葉さんはそう言って、
袋の中を出し始めた。
「…はい!」
ここだったら、私は頑張れそうだよ。
きっと変われる気がするんだ。
だから心配しないでね、ヤス君。
「…にしても大量ですね」
「舞い上がってさ、買いすぎたなぁ」
「もー、翔ちゃん…」
冷蔵庫にしまいながら、
3人でキッチンに立っていると
寮のチャイムが鳴り響いた。
「…誰だろうね、この時間に」
櫻井さんが不機嫌な声を出す。
確かに、言っても、
もうすでに7時は過ぎていた
けれど、別に誰が来ても
不思議な時間帯ではないのに…。
「俺が出てくるよ!!」
相葉さんが元気な声を張り上げて
玄関へと走って行った。
「ご飯、作ってようか」
そう笑った。
さっきの不機嫌な声や顔は、
いったいなんだったのだろう…?
「…なんか、騒がしいな」
櫻井さんが言った。
確かに耳を澄ませば、
玄関が何やら騒がしいような。
2人で玄関へと行くと、
"きゃあ"と黄色い声が聞こえた。
女の子たちだ。
「…帰ってってば~!いま忙しいのっ」
『あの娘だれ!?』
『王子寮に女の子が居るんだけど』
『うそっ、しかも可愛いしっ』
「王子、寮?」
「俺らの住む寮の名前らしい。
いつの間にかそう呼ばれてるんだ」