第3章 Episodes.相葉:笑顔の裏の崩壊
寮に帰ろうと校舎を出ると、
チャラそうな男の人が
私の方を見ていた。
なんか、やなひと。
避けて通ろうとすると
「ちょお、待ってや」
焦った声で私の前へ
飛び出して行く手を阻む。
「な、なんですか…」
「そない怖がらんでもええやん」
ニコニコしてるのに、
何故か寂しさを感じるその笑みに
私は黙って見つめた。
「俺もな、寮生やねん。
用あって寮に戻ってたんやけど、
寮母さん居らへんし、ええかって
でも会えてよかった~!"きれい"やしな」
にこっ、
慣れた表情を見せ、
慣れた言葉を私に言った。
彼にとってなんてことない言葉なんだ
「そんな不機嫌な顔せえへんでも。」
「貴方にとって、その言葉なんて
なんの気持ちもないのでしょう?」
だったら、
そう言おうとすると
彼は怒ったような目つきになった
「言いたくて言ってたらな、
こんなふうな目にはならへんのやで」
そう言い、彼は立ち去ろうとする。
「あ、俺は錦戸亮」
人の気持ちなんて、
感じる事は出来たとしても
やっぱりどうにかなんて簡単じゃない。
彼にとって女の子って存在は、
どんな風に見えてるんだろう
「いずみーーんっ」
遠くから聞こえてハッとする。
相葉さんがこちらへ走って来ていた。
「もうっ、遅いから心配したよ!
理事長は話は済んだからよろしくね、
って言ったのに帰らないんだから…。」
「すみません…」
「もしかしてニノと亮に会った?
あいつら、冷たい態度取ってなかった?」
まるで、私が傷ついてるようにでも
見えているのだろうか。
彼は不安そうに見つめてきた。
「…大丈夫です。」
「そ、っか!なら平気だねっ。
あいつら不器用だからつめたくても
ゆるしてあげてね?」
相葉さんは、にこにこ微笑む。
「翔ちゃん帰ってるから、
早く戻ろうよ。ちゃんと紹介したいしさ」
ほーら、と腕を掴む
『…イズミ』
「いやっっ!!!」
何かが聞こえて、
私は彼の腕を振り払った。
そして気がついて
彼の目を見た
「…ごめんね、苦手な事だよね」
見透かしたような言葉を言った。
それから彼は何も言わず、
ただ明るく面白い話をしてくれた。