第6章 Episodes大倉:無愛想な理由
「大倉は言わへんけど、友達と仲良くして
素直に笑ってたいはずやと思うねん。
ほんまは優しくて思いやりのあるええ奴や
そんな奴を汚しとんのお前やろ?」
僕には分からへんけど、でも、
ねーさんが楽しそうに笑うようになって
そこが学校や友達といることであるように、
大倉にとってもそうだと思うんや。
「…っ、ここから出さへんで」
「僕が手ぶらで権力振り回すと思う?
ちゃーんと、おっさんの悪事を収めとる、
映像や証拠があんねんでー?」
警察に出そうかー?
ピラピラ見せびらかすと
おっさんは焦った顔に変わった。
「研究って何かの為にするもんなんやろ?
その何かの為に、大倉たちは含まれてへんの?」
「…っ、」
「…おっさんが大切に思っとる人はおらんの?」
どこか遠くに大切なものが居たならば、
きっとその大切なものを失って
大事な気持ちを無くしてしまったのだろうか。
「…っ、忠義…っ!」
「おとん」
泣いたおっさんに、
大倉は少しの間のあとに
優しく抱きしめた
「母さんの事だけしか好きやないん
柊真や悠汰や、俺のことは、どうでもええの?」
「ちゃうっ…ごめっ…!」
「そうやって現実から逃げてきて楽しかった?
苦しむ俺らを見て面白かったんか?
母さん、それで喜んで幸せと言うと思ったん?」
「…」
「さようならや、おとん」
弟達2人の手を握り歩き出した大倉を、
後ろから待ってくれと
泣き叫ぶおっさん
「おっさん。もう手遅れやで」
気づくのが遅すぎたんや