第6章 Episodes大倉:無愛想な理由
汗だくの大倉が、
僕を見てびっくりしていた。
「…ここ、どうやって…」
「僕程になるとな楽勝やねん
ほら学校に帰るで〜!」
行こう、と声をかけるも
大倉は静かに首を横に振った。
「弟達を見捨てて逃げられへんし
今逃げたら厄介なことになるから」
人質のようなものかと
瞬時に悟った。
大倉は自分の為だけでなく、
大切なもののために。
なら答えは一つしかないよな
「弟達も連れて行けばええだけやん」
あっけらかんと言う俺に、
さすがの大倉も
「はあ?!」と驚いた。
その弟達も「えっ」と声を漏らした。
「心配事残してここに戻るなら
連れ出す意味無いやろ?なら連れてく」
「で、でもヤツは…」
「心配なら出て行くって言ってけば?
それで気が済むならええと思うけど」
あのおっさんがそれですんなり、
「ええでー」なんて言うはずもないけど。
ここに縛り付けられてたら、
あのおっさんから、
心を解放してもらわな無理や。
「兄ちゃん、出ようよ」
「…ここじゃ、幸せになられへん」
「柊真、悠汰、それでええねんな?」
こくん、と頷く2人に
決意を固めたのか
大倉は僕を見て「頼む」と言った。
「大丈夫やで。3人のことは
僕が守ってやるから。約束出来る」
守られへんとねーさんに嫌われるしな