第6章 Episodes大倉:無愛想な理由
ベッドに寝かされ、
額に濡れたタオル
ヒンヤリとして気持ちよくて。
「なんでこんなくたばってんのに
また研究所戻ろうとしてんの」
「夢を見てん」
夢?
不思議そうに聞き返す翔。
「弟達が殺される夢。
アイツの命令を無視したから
罰だと言って。夢や夢やねんけど
凄く怖かった。」
目の前に広がった血
横で悲しそうな顔で
俺を見る翔
「すまん、忘れて」
ほらやっぱり、
困らせるだけやんか。
困らせたいわけやないのにな
なんも上手くいかん。
「柊真と悠汰は研究所にいるの?」
「せやで。俺を縛り付けるためにな」
俺には双子の弟がいる。
5歳下の小6、もうすぐ中学生。
大倉柊真(兄)は、
気が強く人一倍正義感があって、弟想い
大倉悠汰(弟)は、
病弱でマイペース、でもとても優しいやつ
いつも俺が帰ると嬉しそうに笑うねん。
俺だけ好き勝手にしてんのに、
文句も不満も何も言わんと笑ってくれる。
「外に出してやりたかった。
俺が頑張ればそんなのも簡単やって、
ずっとそう思ってた…あの日までは」
「あの日までは…?」
「でもな、無駄やったんや約束なんて
やからもう、誰も巻き込まへん。
もう助けも求めんし我慢する」
これでええんや、きっと。
もう、あんな夢のような事が
起こってしまえば
俺はもう生きていかれへん。