第3章 Episodes.相葉:笑顔の裏の崩壊
理事長室の前、
なんだか少し豪華な造りに驚きつつも
私はノックをした。
「…失礼します」
静かに言ったのに、
ハッキリと「どうぞ」と返ってきた。
扉を開けるなり理事長が微笑んで、
私に向けて手招きしていた。
「よかった、無事に寮にも行けたみたいね」
「…なんとか」
ぽそぽそとしか話さない私に
理事長が「ふふっ」と微笑んだ。
「一番初めに会ったのは…相葉かしら」
「は、はいっ。そうです」
「なら大丈夫。彼は優しいから」
そう言って理事長は書類を数枚、
引き出しから出して
私に差し出した。
「これ、今日書いて明日持ってきて。
私がいなかったら引き出しに
入れといてくれたらいいから。お願いね」
「はい」
「…怖がらなくてもいいのよ
あの寮は確かに色んなモノに縛られてる
でも決して貴女を嫌ってなんかいないわ
寮に帰らないのはいつもの事なのよ。
だから、思い詰めないでね?大丈夫?」
理事長は頭を優しく撫でると、
じゃあね、と出て行った。
なんだ、いつもの事なのか…。
なんてホッとした。
そうして理事長室を出ると、
ちょっとチャラそうな人達が歩いて来た。
『おっ、可愛い子がいる~!』
『ばり可愛いじゃん。転校生ー?』
近づいてくる彼らに、
恐怖からか震えて動かない足。
どうしよう、このままだと私はーーーー…
『一人なら一緒に遊ぼうよ』
『ちょうど暇だったんだよね!俺ら』
ぐいっと掴まれた手首に、
ビクッと震える肩に意識が遠のいてくる
だめ、まだ、これはただの…
「あんたらなにやってんの」
聞こえた声に彼らは私から手を離し、
『…っ!』
焦った顔に変わった。
振り向くと生徒会長にしか
与えられない指輪をはめた男子が立っていた
「その子、困ってるでしょ。
そんなことも分かんないんすか?あんたら」
不機嫌そうにそう言い、
彼は私を引き寄せた。
そして小さな声で、
(…はぁ、手間かけさせて…なんなの。)
そういった。