🍊レンジ物語番外編・とある夫婦の△関係┏(┏^o^)┓🍊
第1章 研修生・阿部さん、美八学校に現れる
そこは
麗しの人が走る数メートル先の処
言葉を発した場所は
なにもなく、あるのは先程まで人だった赤い肉片の塊のみ。モザイク無しでは見られない映像だ。
しかし、それは意思を持っているかのように
ごそごそと不気味に動きだす。
それを見ていた周囲はその異様な光景に
ザワザワとざわめき始めるがその間にも赤いグロテスクなソレは動く事を辞めず、それどころか動く速さが激しくなり段々と形を変えてゆく。
そして、数分後そこには
枯れ枝の様にほっそりとした、真っ赤なドレスを来た
顔にシワの沢山ある一人のお婆さんが復活したのだった。
急なお婆さんの復活に皆ポカーンとなっているのを余所に
さっきまで動き回っていた彼はピタッと足を止め、突然現れたお婆さんを凝視していた。
顔中皺くちゃな彼は、目をその皺を押し広げるように見開く。
ああ、その顔を私にも見せて欲しい…。
ギリぃと唇を噛み、私は顔には出さないが悔しがる。
私の心のなど知らないお爺さんは、開いていた目を次第にウルウル潤ませて…。
「ま、まーず…ぅ?」
お婆さん…マーズに向かいまるで、幻を見るかの様に両手を伸ばし恐る恐る近づく。
それに気付き、マーズと呼ばれた老婆も「アレックスーぅ」
と土濡れになった目に痛い紅いドレスを翻し、
細い両腕を精一杯広げながら涙目なお爺さん…アレックスの元にかけていく。
どうやら彼の名はアレックスというらしい。
うん、なんとも男らしい名だな。
彼らはお互いの元へたどり着くと、校庭と言う公衆の面前だという事も忘れきつくきつーく抱き合った。時折ボキボキとお互いの体から骨の折れる音が聞こえているが、2人の世界に入っている今の2人の耳には届いていないようだ。
ますます「ぎゅー」と強く抱き合っている。
「どこにおったんじゃー!」
探したんじゃぞ。涙と鼻水を流しながら、か細い折れてしまいそうな手をしたマーズが無駄に筋肉のついたアレックスの体をポカポカ叩く。
「うっ、うっ…すまん。道に迷ってしもうたんじゃ…。で、でもっ!ワシだってマーズの事を探していたんじゃぞ?!」
美人じゃからどこかの誰かに拐かされたんでないかと
心配で…。
動物ならばウサギの耳が頭にあり、しゅんと垂れているであろうアレックスの様子にマーズさんと私の胸がキュンと跳ねた気がした。