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科学班の恋【D.Gray-man】

第81章 そして誰もいなくなった



「どうした、ミランダ」

「………」



再度問い掛ける。
マリの声に反応したミランダが、くるりと振り返り間近でマリを見上げた。
じっと見上げてくるココア色の瞳は、何も映し出していない。
そんな無とも取れるミランダの顔に、マリは不信感を抱き覗き込んだ。



「ミランダ?少し心音がおかし───」



言葉は最後まで形を成しえなかった。
それもそのはず。
屈んだマリの肩に手を添えたミランダが、そのまま吸い込まれるように太い首筋へと顔を埋めたのだ。



「え」

「え?」

「ミッ」

「は?」



それは婦長の噛み付きと似ているようで、ミランダがマリへと行えば意味が変わってしまうようにも取れるもの。

唖然。
からの無言の驚愕。



「───ッ!?」



突然のミランダの行動に周りが固まる中、顔を真っ赤に声なき声を上げたマリが、ボン!と頭から煙を噴き出した。



「ニャー!」

「げ!」

「マリ!?」

「ショートした!」

「そりゃショートもするわ!」



一体全体何事か。
ミランダにも婦長の奇行が移ってしまったというのか。



「おいマリ!」



ショートしたまま固まるマリに、咄嗟に神田が歩み寄る。
と、幼児化した細い神田の腕を、突如マリの大きな手がむんずと掴み込んだ。



「あ?」



ぐいっと力強く持ち上げられ、小さな体は簡単に宙へと浮いてしまう。
2mもあるマリの巨体を前にしても怯むことなく、突然の行為にギロリと神田は睨み付けた。



「おい?一体なんの真似───…?」



顔の前まで持ち上げられ、睨みを利かせた神田の目に映ったもの。



「マリ…?」



それは見慣れた同胞の姿ではなかった。



「ハァアアア…」



口の隙間から零れ落ちる唾液。
それと共に低い唸りのような吐息が漏れる。
両目の焦点は合っておらず、ぴきりと顔の血管が青白く浮かび上がっていた。

其処に在ったのは、一見して正気には思えないマリの顔。

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