第81章 そして誰もいなくなった
「ブックマン正気に戻って…!」
「南さん、落ち着いて。時を待ちましょう」
「アレンっ?」
「そうすればきっとブックマンも救われますから」
「で、でも…」
「大丈夫、時間が全て解決してくれます」
「…そう、かな…」
ぽんと南の肩に手を添えて、優しく微笑みかけてくる長髪紳士な美少年。
さらさらと長く綺麗な白髪姿故か、いつもより大人びて見える。
きらきらと後光さえ見えそうな優しいアレンの微笑みに、南は僅かばかりほっと肩の力を抜いた。
「───で、」
のも、束の間。
「この薬は南さんが作ったものじゃないですよね?」
「ひっ違いますごめんなさい!!!」
みしりと南の肩を僅かばかり強めに掴み、にっこりと有無言わさない笑顔で問いかけてくる姿へ早変わり。
そんなアレンの笑顔の脅迫に、南は咄嗟にぶんぶんと首を横に振った。
こんな馬鹿げた薬、作った覚えはとんとない。
しかしここで謝っておかなければいけない気がした。
直感で。
「悪かったって、アレン。だから南にまでそんな顔するな」
「あ、つい。ごめんなさい」
「ぃ、ぃぇ…寧ろ私がごめんなさい…」
そこへ、にゅっと間に伸びてきた白衣の腕が二人を遮る。
はた、と目の色が変わるアレンはもういつもの表情。
それでも南は冷や汗を浮かべつつ、庇ってくれたリーバーの背中で首を横に振った。
(アレンって普段紳士な分、怒ったら怖いんだよね…忘れてた…)
普段優しく接してくれる人程、慣れていない分、怒る姿は怖いものだ。