第81章 そして誰もいなくなった
「大丈夫…?」
「………」
「…ほら…それもきっと時間が経てば元に戻ると思うから…」
「………」
「言葉なんてなくたってねっほら、男は黙って目で語るというか…っ」
「………」
「兎に猫なんて女子の好きな動物代表だから!好かれる要素満載だから!」
「………」
必死に励まそうとするも在らぬ方向へと脱線する中、黙って背を向けていたブックマンが、くるりと南へと振り返る。
少しは元気になってくれたのか。
顔色を伺いつつ、へらりと南が笑顔を向けてみると。
「ニャー?」
兎耳をした死んだ目の老人は、首を傾げて鳴いた。
「ぶ…ブックマン…?」
「ニャーニャー」
「や…あの、なんて言ってるかわかんな…」
「ニャーニャーニャー」
「ブックマ」
「ニャーニャーニャンニャウ」
「ちょ」
「ニャーニャニャニャウニャア」
「待っ」
「ニャンニャアニャーニャゴニャウ」
「誰かー!ブックマンがキャラ崩壊した!た す け て!!!」
「あーあ…」
「そりゃそうもなるよな…」
「ジジイキモいさー…」
にゃあにゃあと死んだ顔で鳴き続けるブックマンに、いつもの威厳はどこへやら。
必死に彼の両肩を掴んで助けを求める南に、アレンやリーバーやラビ達は、諦めの溜息を零した。
こうなってしまっては仕方ない。
ただひたすらに時間が過ぎゆき、体が元に戻るのを待つのみだ。