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科学班の恋【D.Gray-man】

第81章 そして誰もいなくなった



「そうあまり構えるなよ、南も。こんな夜中まで引越し作業を手伝ってくれてるんだ。アレン達もピリついたって仕方ない」



苦笑混じりに振り返ったリーバーが、アレンのフォローを入れてくる。
科学班だけでなくエクソシスト達の間でも、気の良い兄のような立場であるリーバーであれば、自然な気遣いだろう。



「すみません…そうですよね、もう2時過ぎだし…」

「そういや今日の分の薬はもう飲んだのか?」

「え?」

「婦長に出されてる薬。毎日服用しなきゃいけないんだろ」



そしてその気遣いは、部下である南に対しても勿論のこと。



「誰から聞いたんですか…」

「見てりゃわかる。ラビが何度も気にかけてたしな」

「そういやそうさ、南。日付変わってんだし、薬飲んでおけよ?ほい水」

「って準備良過ぎない?」



まるで息の合ったフォロー。
リーバーに続くラビが両手を上げて差し出してきたのは、いつの間に用意したのか。
ミネラルウォーターの入ったペットボトルだった。

退院して数週間は経ったが、未だに薬は服用するよう婦長に義務付けられている身。
そこで断る理由もなく、南は大人しくペットボトルを受け取ることにした。
口煩く言われ続ける前に、さっさと飲んでしまおう。



「ありが───…あれ?」

「どしたん?」

「薬のケースが…」

「持ってないんさ?」

「そんなはず…ちゃんと持ち歩いてたのに…っ」



しかし常備していた、婦長に貰った薬のケースが体のどこにも見当たらない。
ポケットというポケットをひっくり返しながら慌てて探す南に、リーバーが落ち着いた面持ちで辺りに目を向ける。



「ここ二日は、研究室に寝泊まり状態だったからな。デスクにでも置き忘れてるんじゃないか?」

「あ。そ、そうかも…っ」



言われた通りに、文献の山ができている自分のデスクの上を細かに探すが、しかし目的の物は見当たらなかった。
婦長に毎日の服用言い付けられている薬。
折角貰ったケースごと失くしてしまえば、彼女のお怒りを喰らうのは目に見えていた。
それだけは勘弁したい。

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