第81章 そして誰もいなくなった
「り、リナリー…オレ達の言葉はわかる?」
「ニャー」
「自分のことはわかる?」
「ニャー」
どうにかマリの説得でミランダの暴走を抑えた後。
意識は以前のままなのかどうか、恐る恐る尋ねるジョニーに、こくこくと頷くリナリー。
しかしその口から漏れる言葉は全てがリアルな猫声。
何を言っているのやら、言葉は一切通じない。
「チッ…これコムイにバレたらやべぇぞ…」
「ヤバいどころじゃないよッ問答無用で殺される!」
ぽつりと零した神田の言葉に、ひぃっと悲鳴を上げるジョニーの声は皆の心の叫びそのもの。
超が付く程のシスコンリナリーラブであるコムイがこの事態を目にすれば、怒り狂うのは目に見えていた。
一体全体、なんでこんなことになったのか。
「おいこれ作ったの誰だッ!!」
「お、オレじゃないっすよ…」
「俺も違います…」
「おぉお俺もさっぱり…!」
「…もう嫌だ科学班の引越し…」
声を猫のような鳴き声に変えるなど、どういう用途で作られる薬なのか。
辺りを怒鳴り散らすリーバーに、一斉に青い顔で首を横に振る科学班一同。
薬品が多過ぎて、誰がどれに手を付けたかなんてわからない程に問題は膨れ上がっていた。
切実なアレンの悲鳴は、エクソシスト一同の悲鳴だった。
「ぶ、ブックマン…」
「………」
そんな中、南は恐る恐る重たい影を背負ったブックマンへと歩み寄っていた。
ただでさえ命とも言える毛を失くして喪失していたブックマンへ、更に追い討ちをかける薬の追加。
彼の精神は大丈夫なのか。