第81章 そして誰もいなくなった
「可愛いですよ、その兎耳。本物なんですかっ?」
「ひゃんっ」
慌てた様子で取り繕うように、笑顔のままにふさふさな兎耳に手を伸ばす。
ふにゃりとアレンの手が軽く握れば、ほんのりと温かみを感じる。
同時に南の口から漏れる声は、なんとも可愛らしい悲鳴。
「あ…え、っと…」
普段聞いたことのない声に、じわりとアレンの頬に赤みが差した。
「ぁ、アレン…握られると、なんかムズムズする、から…あんまりそれ、握らないで…」
「ごッごめんなさい!」
ぷるぷると耐えるように兎耳を震わせ懇願してくる。
そんな南の姿を目の前にして、アレンの顔は真っ赤なものへと変わってしまった。
慌ててぱっと両手を離して万歳姿勢。
なんだかいけないことをしてしまった気がする。
「な…なんさそれ…!」
そんな二人の様子を一部始終を見ていたラビが、くわっと眼力強く捲し立てた。
「オレも触りたい!ウサ耳ナデナデしたい!南っオレにも握らせ」
「何喰らい付いてんだテメェはッ!」
ごくりと生唾呑み込み手を伸ばす。
前に、ごつん!と神田の幼いながらも重い拳が、ラビのオレンジ頭に炸裂した。
「い"ってぇ…!」
「それより問題はこっちだろ!動き難くて仕方ねぇっ」
「うーん…服、どうしよっか。私の子供服じゃ女物だし…」
「ブックマン辺りのものでいいんじゃないか?体格は同じくらいだろう」
ぶかぶかの服を引き摺って、まともに歩けもしない神田が荒く文句を上げる。
頭を捻るリナリーの横で、マリが無難な解決策を導き出した。
ブックマンくらいの背格好の二人。
恐らくぴたりとはまるだろう。