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科学班の恋【D.Gray-man】

第81章 そして誰もいなくなった



「なっちまったもんは仕方ないだろ。幸いどれも時間経過で戻る薬だし。ラビと神田はまだしも、南達は作業に支障もないだろう。あんまり責めてやるな」

「リーバー班長…っ」



ぱんぱんと手を鳴らして、薄ら笑いでからかう一同を止めたのはリーバー。
救世主を見つめるような目で、南が歓喜の声を漏らす。



「ありがとうございますっ」

「ああ……ぃゃ」



きらきらと輝くような目で見上げてくる、兎耳を生やした南。
長身なリーバー相手だと自然と上目遣いになる彼女を前にして、そろりと視線を逸らした。

確かに引っ越し作業に支障はない。
しかし別の意味で支障は出るかもしれない。



(…直視できねぇ…)



見慣れない獣耳姿に、そんな趣味嗜好はないはずなのに顔が変な熱を持つ。
これはこれで問題だ。



「はい、できたわよアレンくん。痛い所はない?」

「大丈夫です。ありがとうございます、ミランダさん」



アレンの長髪を手持ちのリボンで、綺麗に一つ結びにしたミランダがぽんと軽く肩を叩く。
感謝の言葉と共に、アレンは苦笑混じりに首を横に振った。

驚きはしたものの髪が伸びただけなら、リーバーの言う通り、そう問題はない。
元々整った顔立ちのアレンは男性ではあるが、長髪もしっくりと似合っているものだった。



「にしてもよかった、マシなので…」

「………」

「あッ…ち、違いますっ南さんのそれが駄目だって言ってるんじゃなくて…っ」



つい深々と溜息を零せば、暗い鬱々とした顔でじぃっと見つめてくる視線が痛い。
南の無言の訴えを肌に感じつつ、アレンは慌てて両手を振った。
確かに兎耳は遠慮したいが、神田達のように体が幼児化することに比べればマシだろう。
アレンが零したのは、そんな意味での本音だ。

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