第81章 そして誰もいなくなった
慌てて声を張り上げ駆け出したリーバーだが、時既に遅し。
文献の山と共に机の下に落下したアレンは、ぼふんっ!と忽ちに白い煙に包まれてしまった。
「あ…」
「わぁああああ!?!!」
「またやったか…」
濛々と立ち昇る白い煙。
その衝撃で目が覚めたのだろう、叫び声を上げながら飛び起きたアレンの姿は、リーバーの予想していた通りのものだった。
「か…っ髪!髪がぁあああ!?!!!」
「わー…アレっすね」
「アレだな…」
「アレか…」
ぶわっとまるで水に浸かった若布の如く。
うねりながら伸びゆくアレンの真っ白な髪。
あっという間に腰の辺りまで伸びきった異常な姿に、慌てふためくアレンとは対照的な科学班一同。
理由は簡単。
彼らにとってその現象には、見覚えのあるものだったからだ。
「な、なんですかこれ…っ」
「あー、やっぱり。アレン、さっきの衝撃でこれ被っちゃったんだよ。科学班印の育毛剤」
「い、育毛剤…?」
アレンの足元に落ちている、蓋の開いた小瓶。
見覚えのあるラベルを手にして、ジョニーが苦笑混じりに頷く。
「それは前にバク支部長の誕生日に作った強力育毛剤だ」
「そうそう。親切で作ってあげたのに、支部長要らないって突っ跳ねたんですよね~」
「いっつも帽子被ってんのは、てっきりハゲ隠しかと思ってたのにな」
「誰だったっけ、そんなデマ流したの」
「さぁ。室長じゃなかったか?」
「大丈夫だよー、アレン。これも時間が経てば元に戻るから」
ぞろぞろと様子を見に来るリーバーやロブ達一同。
最後のジョニーの言葉にほっと胸を撫で下ろしつつ、アレンはガクリと項垂れた。
これ"も"なのかと。