第81章 そして誰もいなくなった
「うし、じゃあ戻るさ。はんちょ!皆も!」
「お、おお…ってなんでお前が仕切ってんだよ、ラビ」
「ここでの一番の怖がりはラビかもなぁ~♪」
「別に?怖くねぇし!南の頭が変にネジ飛んでるから、手伝ってやってるだけだし!」
「何それ私の所為!?」
「ま、確かにそこは同意かもな。南は仕事し過ぎなんだよ。少し残業減らせよ~」
「マービンさんまで…!」
「まぁまぁ。とにかく無事荷物も隠し終えたし。戻りますか、班長」
「はぁ…だな。休みが必要なのは俺ら全員だ」
やんやと騒ぐラビや南達を見ながら、ハスキンの言葉に同意を返すと、リーバーは疲れた顔で肩を落とした。
とりあえず、これで一つ問題は片付いた。
今日の所は全員退勤させて、自分も体を休めるとしよう。
「隠し忘れはないな。よし」
「鍵閉めるぞ、皆出ろ~」
「はぁ~、やっと寝れる…」
「これでコムイ室長の悪質な薬ともおさらばか…助かった…」
ぞろぞろと備品室を去る一同。
解体して折り畳んだ段ボールを手に最後尾を続く南は、ふと扉の前で足を止めた。
振り返る。
背後は暗い備品室。
誰もいない、気配もない。
やはりあれは気の所為だったかと今では思う。
けれど。
(…最後…なんて聞こえたんだっけ…)
ふと思い出したのは、不協和音のような奇妙な笑い声ではなく、最後に聞いた謎の声。
あれは、何かの単語を成していたような気がした。
(確か……わ───)
「南っ!」
どうやら考え込んでしまっていたらしい。
はっと南の意識を引き戻したのは、視界に入り込む明るいオレンジ色。
「ったく、ボーっとすんなさ」
「ぁ、ラビ…ご、ごめん」
「早く出ないと鍵閉められないだろ。南、ラビ」
「ああ、わかってんさ」
「すみませんっ」
開いた扉の向こうから注意してくるリーバーに、慌ててラビと共に部屋を出る。
パタンと閉められる扉。
通路の光を遮断して、一気に備品室は暗い空間へと塗り替えられた。