第81章 そして誰もいなくなった
「最初から南しか見てないぞ、俺は」
「そうですか……やっぱり気の所為なのかな…」
「気の所為って…な、何言ってんさ南」
「お前まさか…変なもん見たとか言うんじゃねぇだろな…」
「うわ…とうとう南もジョニーとタップの仲間入りか…」
「あれ?南って心霊系苦手じゃなかったっけー?」
「オレらに感化されたんじゃね?」
リーバー同様、訝しげな顔をしたのはラビ含めた科学班一同。
うわあ、と嫌な顔をするマービンやロブ達に対し、ジョニーとタップだけはあっけらかんとしたものだった。
「別に感化なんてされてないよ。でもなんか変な声というか、音というか…そういうものが聞」
「わー!やめやめ!ったく!お前らの所為だぞタップ!ジョニー!そういう話すると霊ってもんは寄ってくるんさ!」
「えー?そんな言い方酷いよラビー」
「オレらは寧ろ明るくなるよう、話してやってただけじゃねーの」
「んな余計なお節介要らねぇから!祟られても知らねぇつったろ!」
尚も続けようとした南を遮るように声を張り上げたラビは、特に真っ青な顔をしていた。
(そういえばラビって、そういうの嫌ってたっけ…)
ぎゃんぎゃんとジョニーとタップに噛み付くラビの必死さに、ふと思い出す。
世界各国に野放しにされているイノセンスは、その力で何かと怪奇現象のようなものを引き起こす。
故に任務先で本物の心霊現象に出くわすことも多く、以前肩を落としながらそのことを愚痴っていたラビの姿を。
「ほら南!寝惚けたこと言ってねーで、サッサと片付けてこんな所出るさ!」
「あ、ちょ…っ取り扱いには気を付けてよっもし中身が溢れたら…!」
「ハイ完了!」
「早ッ!」
目にも止まらぬ早業とはこのことか。
この場で誰よりも焦りを見せたラビが、あっという間に段ボールの中身を床下倉庫へ移し終えてしまった。