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科学班の恋【D.Gray-man】

第81章 そして誰もいなくなった



「え?此処?」



辿り着いた目的地。
その室内に踏み込んだラビは、きょとん顔で辺りを見渡す。



「科学班の備品室じゃん。こんな捻りのねーとこに隠すんか?」



処分できない程の有害な危険物を隠す場所だから、てっきり誰もが予想できない所に隠すとばかり思っていたが。
薄暗い廊下の先で科学班一同が足を止めたのは、彼らが一番馴染み深いであろう、科学班の備品室。
コムイが生み出した薬品が置いてあっても不思議ではない所。
何故こんな所に隠すのか。
否、それは隠すと言える行為なのか。

首を傾げるラビを、立ち塞いだのは二つの影。



「ふっふっふっ、知らないんだぁラビ」

「入団して数ヶ月は経つのに。ブックマンの跡継ぎ足る者、そんなことではいけませんなぁ~」

「…んだと」



キランと目を光らせ薄ら笑うジョニーとタップ。
ずずいっと両側から歩み寄る二人に、嫌な気配を感じ取った南はさり気なく距離を取った。



「なんさ急に。近」

「出るんだわぁ、此処」

「…出る?」

「コレだよコレ!」



これまたずずいっと両側からラビに顔を近付けて、まるで脅すような声色で話す。
ジョニーとタップは両手を前に出して垂らし、"それ"を匂わすような姿を象った。

所謂"心霊"的なものである。



(…出たよ)



教団の科学班として働いている以上、ジョニーもタップも霊魂の存在は認めている。
が、二人にとってはそこまでのもので、恐怖などは感じていないらしい。
寧ろ面白がって怪談話をしては怖がらせてくるのだ。
そのことを身をもって知っていた南は、やれやれと呆れた顔で肩を落とした。

そんな南もまた、以前二人にこの備品室での怪談話を聞かされたことがある。
一人で備品室で作業していると、物が勝手に倒れたり人の声が聞こえたり、怪奇現象のようなものが起こるのだという。
有名な話ではあるらしく、半信半疑であったが怖いものは怖い。



(さっさと荷物隠して出よ)



だが今は科学班の皆と共に来ているのだから、深夜であっても然程怖さはない。



「はいはい。ラビありがと。後は私がやるから」

「あ。おう」



怪談話に興じる同僚は放って、手早くラビの腕から段ボールを返してもらい、片付けに集中することにした。

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