第81章 そして誰もいなくなった
「なんさ。どんだけ重いかと思えば、そうでもねぇじゃん」
「え…あ、ちょっと」
「見てたらふらふら危なっかしいし。オレがこのまま運んでやっから」
「ええっいいよ…!」
「だからその危険物ってやつ教えて♪」
(ってやっぱり!)
等価交換とでも言いたいのか。
にこにこと笑って尋ねてくるラビは、どうにも退く様子がない。
(あーあ、南の奴捕まっちまったな…)
(ラビって興味持つとしつこいからなぁ~…)
「つーか、この中見れば早いんじゃね?」
「あっ!駄目!勝手に開けたら!怒るよ!」
スタスタと軽い身のこなしで歩きながら段ボールの中を覗き込もうとするラビ。
を、全身全霊で止めに掛かる南。
周りが疲れた顔でそんな二人を傍観する中、ジョニーは興味深そうに目を向けていた。
「なんか…南とラビって最近仲良くなったよね」
「え?」
「へ?」
唐突な彼の言葉に、重なった声は渦中の二人。
「ほら。ラビが教団に入団し立ての頃は、そんなに絡んでなかったじゃん」
「そういやそうだよなぁ。寧ろラビの前じゃオレらの時に比べて口数少なかったし。南」
「そ、そうだったっけ…」
「「そうそう」」
うんうんと息ピッタリに頷くジョニーとタップに、南は苦い笑みを浮かべるだけ。
付き合いの長い同期には見破られていたらしい。
そして心当たりはあるから、なんとも言えない。
なんせ最初はラビに一線を引いていたのだから。
(今はもう、そんなことないけど…)
仮面のように貼り付けて見えたラビの笑顔。
それを彼なりの事情があるのだからと受け入れられれば、段々と作り物には見えなくなってきた。
現にこうして絡んでくるラビの今の姿は、至極自然体のようにも思える。
それだけ南がラビという人間を受け入れられたからか。
それともラビが南に対して素を向けるようになったからか。