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科学班の恋【D.Gray-man】

第80章 再生の道へ



目を背けたくなるような血の惨劇を後にして、尚。
何も変わらずそこにいるリーバーを目にして、自然と顔が綻ぶ。



「いえ、頂きます。でもその前にあれを止めなきゃ───」

「いいよ、アレは僕が止めておくから。南くんはリーバーくんの所にいっておいで」



しかし彼の元に行きたくても、目の前のラビ達の騒動を見て見ぬフリはできない。
リーバーに苦笑混じりに返しながら、未だに騒ぎ立てているラビ達を指差す。
そんな南を止めたのはコムイだった。



「え?」

「だから、ここには気にしないでって」

「…え?」

「はっはー☆南くんその顔傷付くんだけどナー」

「いや、だって……え?」

「だから、宇宙人でも発見した目で僕見るのやめてくれないかな?傷付くから」


(だってあの室長が自ら面倒事を引き受けるとか。頭でも打ったんですか)

(打ってないからその目やめてってば)


「…心の声に反応しないで下さい」

「読まなくてもわかるよ、その顔で。それより午後は南くんの祝賀会で、今日はもう仕事は休みだから。君が主役なんだよ。いっておいで」



深い溜息をついた後、ぽんっと押すようにして肩に触れていたコムイの手が離れる。
優しい促しについ顔を上げれば、声と同じにコムイが浮かべていたのは、リナリーに時折向けられるような優しい笑みだった。



「おかえり、南くん」



短い言葉だった。
短くも温かみのある、迎え入れてくれる抱擁の言葉。
思わず目が奪われた。



「よく戻ってきてくれたね」

「………」



同じ科学班の一員でありながら、本部襲撃事件で唯一第五研究所から逃れられていたのはコムイただ一人。
基より黒の教団の最高責任者である彼は、抱えている思いも覚悟も違うはず。
今回のことで責任を何よりも感じているのは、迷わず彼だと言えるだろう。

しかしそんな姿は露程も見せず、優しい言葉と笑顔で迎えてくれている。
コムイのその姿を目の当たりにして、南は言葉を詰まらせた。

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