第80章 再生の道へ
改めて、ひしひしと感じる。
(やっぱり凄い人だ、この人は)
コムイの器の大きさ。
誰よりも命を重んじ、そしてその命を全て抱える覚悟を持っている。
生半可なものではない、強い信念を持って。
そんなコムイだから、リーバーも愚痴を零しながら悪態を突きながらも、彼を支えて行こうと決めたのだろう。
(…同じだ)
リーバー程の力量は持てなくても、その気持ちは南にもよくわかった。
異性としての好意など関係なく、そんなリーバーを南も傍で支えたいと思えたから。
「ありがとうございます、室長」
深々と頭を下げる。
こんなにも手本となるべき上司が傍にいるのに、見習わずしてどうする。
間を置かずに上げた南の顔には、確かな笑み。
「科学班第一班、椎名南。只今戻りました」
リーバーのような力量もコムイのような器も、簡単に持てるとは思っていない。
しかし支えたい強い思いはある。
非力であっても、ただただ力になりたいと思えた。
その気持ちを伝えれば、傍にいてくれと彼もまた応えてくれたから。
真っ直ぐに向けられる南の笑顔と言葉に、きょとんとコムイの目が瞬く。
「…うん」
しかしそれは一瞬だけのもの。
一呼吸置けば、再び浮かんでいたのは優しい表情。
今度は背中を押す間もなく、南は「頼みます」とコムイに一言告げると潔く背を向けた。
向かう先は、待っていてくれているリーバーと、彼の後方に広がる同胞達の所。
「今、行きます」
そして再生への一歩を。