第80章 再生の道へ
暗い研究室の真ん中。
誰かの席だろうか、其処に灯る微かな光。
蝋燭か何か、橙色の光に照らされて見えたのは、その席に座っている白衣姿の背中。
誰かはわからない。
しかし白衣姿となれば科学班の研究員。
南の知り合いであることは間違いない。
「あの…!」
ラビの指摘に、小走りにその背中に駆け寄る。
そのまま南は、白衣の肩へと手を掛けた。
「すみませんッ」
近くに寄れば、背は随分と大きい。
リーバーかもしれない。
そう期待を込めて、肩に手を掛けたまま椅子に座っている人物を横から覗き込む。
蝋燭の橙色の光に照らされて見えた、その人の顔は。
機械。
「……え?」
唖然。
予想もしなかった顔を前に南が言葉を失った瞬間、ぱっと突然周りは強い光に包まれた。
同時にパンッ!と大きな銃声のような音がする。
「っ!?」
それは一つではなかった。
パンパンとあちこちで鳴り響く音に南が身を竦めた時。
「せーの、」
「「「「退院おめでと~!!!!!」」」」
その場に響き渡る沢山の声。
(……え?)
ぽかん。
そんな効果音が付きそうな顔で固まる南の頭に、ひらひらと上から舞い落ちてきた軽いなにかがふわりと乗る。
頭から垂れて視界を遮ったのは、赤や黄や緑のカラフルな紙吹雪のリボン。
「わぁ…吃驚した…!」
「ったく…無駄に驚かせやがって」
「あれ?なんでアレン達もいんの?」
「ああ、いえ…南さんが退院初日に出勤するって言うから、心配でついて来たというか…」
「はっはっ、相変わらずアレンは優しいなぁ」
「………」
「おーい、南。…大丈夫さ?」
明るく照らされている研究室。
シンと気配を感じさせない空間だったが、明るくなればガラリと雰囲気を変えた。
こっそり待機していたのだろう、硝煙の臭いを残すクラッカーを手にした科学班一同が、南達を取り囲んでいる。
その中心で事態を把握したアレン達は、笑顔のジョニーやロブ達を前に一斉に安堵の息をついた。
ただ一人、南だけを除いて。