第80章 再生の道へ
「───で?」
見慣れた科学班の研究室の扉前。
数ヶ月ぶりの職場に些か緊張しつつも、後方をちらりと振り返った南の顔は、途端に疲れ気味なものに変わる。
まだ職場復帰もしていないのに、疲労を感じさせる顔だ。
「結局皆ついて来たの…」
南の目に映っているのは、ついて来ると言ったアレンとラビと神田だけではない。
退院の手伝いをしてくれたエクソシスト全員が、その場に当たり前のように立っていた。
「だって科学班の給仕しなきゃ。可笑しなことじゃないでしょ?」
笑顔で頷くリナリー。
「私は、リナリーちゃんの手伝いで…」
おずおずと賛同するミランダ。
「ミランダが心配で…つい、な」
苦笑混じりに首筋を指で掻くマリ。
「俺も一度見てみたかったんス、科学班の仕事っぷり!」
キラキラと邪気のない目で子供のように笑うチャオジー。
「私はウォーカーの監視でついて来ただけです」
最後に興味なく取り付けたように応えたのは、唯一エクソシストから除外される人物、ハワード・リンクだった。
「はぁ…仕事の邪魔はしないでよ?」
「勿論です」
「いえっさー」
「わかったからさっさと開けろ」
良い子の手本のように、笑顔で良い返事を返すアレンとラビ。
その横で早く行けとばかりに片手を払う神田の言葉に押され、南は渋々と研究室の両開きの扉の取っ手を掴んだ。
時間帯的にも、リーバーは南が来ることを予想しているだろう。
こほん、と咳払い一つ。
「し…失礼、します」
普段は掛けない律儀な挨拶を入れつつ、南は両扉の取っ手を押し開いた。