第80章 再生の道へ
寒気のするような冷たい声。
恐る恐る振り返った南の目に映ったのは、鮮やかな金髪。
「…り、リンクさん…?」
「はい」
中央庁監査職員、ハワード・リンク。
思わずその名を口にした南に、淡々と感情の見えない声色で返事をする。
鋭い両目はしかと南を捉えたまま。
そしてその両手はしかと南の肩を背後から捕まえたまま。
「…いつの間に」
「いましたよ、最初から。私はウォーカーの監視役ですから」
「え?い、いましたっけ?」
「はい」
「!?」
(何処に!?)
まるで気配のない忍者の如く。
頭から過去の記憶を引っ張り出してみても、リンクの姿は出てこない。
凡人である自分では覚れない程の気配の殺し方なのか、と驚愕する南の後ろで、無表情のままリンクは動こうとはしなかった。
「それで、何処に逃げるおつもりで?」
「え。に…逃げるだなんて、そんな…」
「あっ!何出ていこうとしてんさ南!」
「げっ」
しどろもどろに首を横に振れば、その間に見つかってしまったらしい。
びしりと指差してくるラビに、南はしまったと顔を顰めた。
「なんさ、"げっ"って」
「ぃ、ぃゃ…それは…」
「よく止めましたリンクっ。偶には役に立つじゃないですか」
「何言ってるんですか。そもそも貴方方、一般人の気配くらい覚れないんですか。エクソシストが聞いて呆れる」
「て、手厳しいっス…」
「流石中央庁だな…」
淡々と呆れ顔で駄目出しするリンクに、チャオジーとマリの顔は渋い。
リンクに肩を捕まえられたまま、あれよあれよとエクソシスト達に囲まれる事態に南はがくりと頭を下げた。
見つかってしまっては仕方ない。
がしかし、諦めるつもりもない。