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科学班の恋【D.Gray-man】

第80章 再生の道へ



「何喧嘩してるの?二人共」

「喧嘩?まぁそれは駄目よ…っ」

「大丈夫だ、ミランダ。大事になんかなってないから」


「…あれ?皆、どうしたの」



南の制止で病室が静まる。
そこに見計らったように、コンコンと病室の扉をノックする音が鳴り響いた。
開放されたままの病室の扉を通り抜けてきたのは、見知ったエクソシストの三人。
リナリー、ミランダ、マリ。



「どうしたのって、今日は南さんの退院の日でしょ?」

「お祝いとお手伝いに来たのよ」

「退院おめでとう、南」

「そうなんだ…ありがとう、皆」



当たり前のように祝いに来たと言い切るリナリー達に、南が砕けた笑みを浮かべる。



「これで科学班は全員退院か。よかったな」

「うん。私が最後になっちゃったけど…」

「順番なんて関係ねぇさ。しっかり体治すのが大事だろ」

「そうですよ」



優しい笑みを浮かべるマリに、申し訳なさそうな表情を作る南。

南の退院許可は簡単には下りなかった。
止めたのは、医療班で一番の権限を持つ婦長。
職場へ戻れば日頃から残業の日々を送っていた南のこと、また体に鞭打ち仕事に励むのを婦長も理解していたのだろう。
故にしかと体を動かせるようになってからの退院と至った。

毎日のリハビリを積み重ねて松葉杖も取れ、細かい手作業もできるようになった頃、やっと許可された仕事への復帰。
科学班で最後の退院となってしまったが故に、職場の皆への申し訳なさが募る。
しかしそんな南の左右背後から、ひょっこりと顔を覗かせて否定したのはラビとアレン。
うんうんと強く頷く二人の声を耳に、マリが盲目の目を向けた。



「アレンとラビもいたのなら、人手は足りてそうだな」

「おう。オレとアレンで南の荷物は全部運ぶから」

「あ。じゃあリナリー、南さんのことお願いしますね」

「うん、わかった」

「任せるって…え、いいよ。もう体は完治してるし、子供じゃないんだから…っ」

「じゃあこれは?」

「え?…あ」



これ、と言ってリナリーが手に取ったのは、棚の上に置かれていた薬袋。
真っ白なその薬袋を目にすると、南は思わず口を閉じた。

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