第80章 再生の道へ
「完治はしてないんでしょ?まだ」
「へ?そうなん?」
「そうなんですか?」
「…ぃゃ……まぁ、」
「まぁ!そうなのっ?」
「南の怪我はジョニーと同じで、重体だったからな…」
リナリーに見破られ気まずそうに頷く南に、ラビ達が驚きながら薬袋と南の顔を二度見する。
マリの言う通りに、南とジョニーは最後まで入院を余儀なくされた科学班の二人。
ジョニーはどうしても早く職場に戻りたいと強く要望し、車椅子から松葉杖に変わったと同時に渋々婦長の退院許可が下りた。
しかし南は女性という身もあってか、退院許可が下りたのは松葉杖が不必要になってから。
「でもそれ、ただの痛み止めみたいなものだよ。必要な時だけ飲むというか…」
「痛み止めって、まだ体痛むんさ?」
「…体を酷使したら、ね?普段の生活なら支障ないから」
「科学班は普段の人らしい生活なんてしてないでしょ」
「…き、気を付けるよ…婦長さんにも残業は暫くしないようにって言われてるし…」
はきはきとした口調で尤もなことを言ってくるリナリーに、しゅんと南の肩が下がる。
これではどちらが年上なのかわからない。
普段通りの生活はできるようになったが、手先の細かい作業を長時間行ったり激しい運動を続ければ、手先や腹部はまた悲鳴を上げる。
それを見越した婦長が特別に処方した薬だった。
「まだ一安心ってだけかぁ…」
「南さん、無茶しちゃ駄目ですよ?」
「うん、わかってる。子供じゃないんだから」
はぁ、と大きな溜息をつくラビの隣で、心配そうな表情を向けてくるアレン。
対して苦笑混じりにぱたぱたと手を横に振る南は、本日何度目になるかわからない台詞を口にした。
そう、彼女は子供ではない。
一般常識を身に付けた大人だ。
(だから尚の事、心配なんですけどね…)
(そこんとこわかってんのかね、南は…)
だからこそ一人で責任を負おうとしてしまう所があるから、心配なのだ。
「「………」」
「何?」
「いんや」
「なんでもないです」
じっと目を向けてくるラビ達に南は首を傾げたが、諦めに似た表情で二人は同時に首を横に振った。