第80章 再生の道へ
「南はオレを捨てるって言うんさ…!?」
「あの…っ」
「そ…そうは言ってないけど…ッいきなりで吃驚したというか…ッ」
「皆さんっ」
「なんですか捨てる捨てないって。男が泣き落としなんてみっともないですよラビ」
「あのーっ」
「とりあえず斬る」
「聞こえてますっ!?!!」
「「「「?」」」」
先程から会話の節々に入り込んでいた声。
最初こそ遠慮がちだったものが、最後には大声で怒鳴るようなものに変わり、南達の意識をやっと向けることができた。
「なんさ」
「チャオジー?」
「どうしたんですか」
「んだようっせぇな」
「あれ!皆さん、あっち!」
何事かと目を向ければ離れた場所でチャオジーが、あわあわと慌てた様子で何かを指差している。
つられるままに、南達はチャオジーの指差す先を目線で追った。
それは修練場の出入口前。
「───其処の、」
ひんやりと冷たい声。
其処に立っていたのは、一人の女性だった。
「仕事中毒者二名とエクソシスト五名」
ひゅお、とまるで冷たい冷気が吹き込むかのようだった。
彼女が言葉を発すると、修練場の空気が一気に下がっていく。
低く冷たい声が、ねっとりと地面を這う蛇のように南達の耳に絡み付いた。
ぎくりと一斉に動きを止める南とラビ達ティーンズ組。
そしてジョニー、マリ、ブックマンもまた同様に。
「だぁぁぁれが病室から出ていいと言ったのかしら…?」
いつぞやで聞いたことのあるその声、その台詞に、南とラビは顔を引き攣らせた。
聞き覚えがある。
凄く聞き覚えがある。
あれは確か病室のベッドの中に、南とラビが共に隠れ潜んでいた時のこと。
不純異性交遊だと疑われて、盛大に怒りの雷を落とされた。
「ふ…」
「…婦長…」
そう。
軽く首を傾げながら問いかけてくる、医療班で一番偉い(そして怖い)婦長という立場のその女性に。