第16章 夕日に映る影
ギィ…
埃を被った廊下を歩く。
その度にギシギシと僅かに軋む音が静かに響く。
結構な年数、経ってんのかな。
「見たところ、誰かが使ってた形跡はなさそうですが…」
「長年、放置されてたみたいさ」
家具の上に指先を走らせる。
たちまち指先に溜まる埃の多さは、放置させられた年月を物語っていた。
中は極々普通の館内だった。
廃れてはいるものの、朽ちた家具はそのまま残ってる。
「にしても、ほんとデケェ館だなぁ。あっち側が見えるさ」
「この建物は北館と南館に分かれているようですね」
入口から右と左に分かれた道。
恐らくこの館は、上空から見下ろせば【コ】の形をしているんだろう。
南館の廊下を歩けば、広い中庭を挟んで北館の廊下も見える。
二階の廊下をギシギシと歩いていると、ふと人影を同じく二階の北館に見つけた。
あれは…南?
「トマ、見ろよ。あっちにいんの、南じゃねぇさ?」
背丈からして多分南だ。
中庭を挟んで結構距離あるから、よく目を凝らさないと見えないけど。
「みたいですね。連絡を入れましょうか」
トマが通信ゴーレムを起動させる。
「椎名殿、こちらトマですが。聞こえますか?」
暫くして、ジジ、と音声が繋がる音が届く。
『ト…さん?…こ…て、…ます』
「電波が悪いみたいですね…」
「こりゃ、連絡取り合うのは難しそうさな」
途切れ途切れに聞こえてくる声は南のものだと辛うじてわかるけど、何を言っているのかはまるでわからない。
「おーい、南!」
窓際から大きく手を振ってみる。
向こう側に辛うじて見える、二つの人影。
南とアレン。
気付いてくれっかな。