第16章 夕日に映る影
「こんな立派なお屋敷があるなんて。少し、場違いというか…」
「違和感、ありますね」
「うん」
まじまじと古びた屋敷を見上げる南とアレン。
村長の家を後にしてやって来たのは、村から離れた場所にぽつんと寂しく佇む、もう使われていない館だった。
周りは背の高い草が生え放題で、廃れた様がよくわかる。
消えた仲間のファインダーから貰っていた情報では、黒い影はこの館で目撃されていたらしい。
此処を調べれば、何かわかるかもしれない。
「内装が大きく二手に分かれているので、私達も分かれて捜索しましょう。私とラビ殿。椎名殿は、ウォーカー殿とお願いします」
「わかりました」
「ちょい待ち」
さくさくと指示するトマに、つい口を挟む。
「その人選はどっからきてるんさ」
「どっからも何も、さっきからビクついてるラビとアレンを一緒には組ませられないでしょ」
「………」
当然だと口にする南に、ぐうの音も出なかった。
そりゃ…まぁ…ビビったのは認めるけどさ。
でもそれならオレが南と組んだって、別に変わんねぇじゃん…。
「それより、ほら。日が暮れる前に捜索しないと。行くよ、アレン」
「あ、はいっ」
「はぁ…わぁったよ。アレン、南頼むさ」
「勿論です」
AKUMAの危険はないとわかっていても、100%安全だという保障はない。
それならオレの目の届く範囲にいてほしい。
そう思ってしまうオレは、やっぱコムイが言ってたように保護者面し過ぎてんのかな。
任務の同行を反対したのも、やっぱり身の安全が保障されていないからってのが理由だった。
「行きましょう、ラビ殿」
「…ああ、」
アレンが傍にいれば…まぁ、大丈夫か。
ゆっくりと夕日が辺りを茜色に染める。
赤く照らされ伸びる二人の影を見送りながら、そう言い聞かせながらオレはトマと一緒に廃れた館の扉を押した。