第80章 再生の道へ
「やだなぁ…まだ"まいった"とは言ってないで…しょッ!」
「!?ッテメ…!」
苦笑混じりな表情が一変。
黒い笑みに変わるアレン。
座り込んだ体勢から砂地に両手を着くと、一気に蹴り上げた足を神田の腕に絡ませる。
「うりゃあッ!!!」
「ぐ…ッ!?」
そのまま体勢を崩されると、ズダンッ!と神田は頭から砂地に叩き付けられた。
「うわー…あれ剣術稽古?」
「はは…二人らしいねぇ…」
思わず呟く南とジョニーの半分呆れたような声。
それが届いたのか、敷地の縁に腰掛けて傍観していた他のエクソシスト組が振り返った。
「ああ、南とジョニーか。もう動いて大丈夫なのか?」
気遣うように優しい声を投げかけてくるのは、ティエドール部隊のエクソシスト。
ノイズ・マリ。
「ああっ!神田先輩!…あっ。っス!」
アレンに叩きのめされる神田に悲鳴を上げつつも、律儀に返事一つ。
頭を下げてくるのは同じくティエドール部隊に所属されたばかりの、新人エクソシスト。
チャオジー・ハン。
「なんじゃ、久々に見る顔だのう」
ぷかぷかと煙草の煙を口の端から浮かばせながら目を細めるのは、エクソシストであり世界の裏歴史を記録する者。
ブックマン。
そして。
「おー、ジョニー…って」
ぱちりと南の目と重なると、一瞬口を閉じたのは、ふわふわの赤毛の彼。
「南…?なんで此処に…ッ」
南の姿を視認するや否や、慌てて腰を上げて駆けて来る。
自分だって入院中の身なのに、ナースの目を盗んでは時々こっそり会いに来てくれていた、馴染んだ顔。
嬉しそうに、でもどこか心配そうに。
複雑な表情を見せる眼帯を付けた隻眼の彼に、南は顔を綻ばせ笑顔を返した。
「ラビ」
その名を呼ぶ声は、柔らかい。