第80章 再生の道へ
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ガキィン!と鋭い打撃音が響く。
其処に導かれるように暗い廊下を進めば、やがて開けた明るい広間に出た。
「あ。いたいた」
ジョニーとタップの話を交えた後、少しだけ時間を掛けてお互いに心を落ち着かせた。
もう涙の気配はない。
そんな車椅子に座っていたジョニーが、目的の人物を見つけて声を上げる。
ゆっくりとその後ろで車椅子を押しながら進んでいた南もまた、ジョニーの視線の先を辿った。
此処は修練場。
プールのような深い堀の作られた、広い砂地の敷地から響く鋭い打撃音。
そこで竹刀を手に剣術で稽古し合っているのは、珍しい白と黒の組み合わせだった。
「アレンと神田だ」
「珍しいね、あの二人が組んでるなんて」
「うん」
思わずその名を口にすれば、同じことを感じていたらしいジョニーが、感心気味に呟く。
犬猿の仲と言ってもおかしくない程、あの二人は顔を合わせれば常に喧嘩している仲。
生理的に合わないのだろう、そんな二人が稽古事で組んだところなんて早々見たことがない。
「はぁ…っは…っ…も、動けない…」
「はっ口程にもないな、モヤシ」
キィキィと車椅子を押しながら歩み寄ってみる。
近付いて見えてくる詳細。
長い時間稽古していたのか、汗だくになりながら尻餅をついているのはアレン。
その手に握られた竹刀は、どこをどうしたらそんな有様になるのか。
根元の部分から縦に割れて無残なガラクタと化していた。
そんなアレンの前で竹刀を突き付け、見下ろし薄く笑っている神田もまた、肌に無数の汗の粒を浮かせている。
「流石です、神田…やっぱり剣だと敵いませんね」
「当たり前だ。無駄な動きが多過ぎんだよ、テメェは。さぁ丸刈りになってもらおうか」
「「………丸刈り?」」
((って何))
二人の会話に不可思議な単語を見つけて、思わず南とジョニーは同時に呟いてしまった。
一瞬仲良く稽古をしていたのかと思ったが、どうやらそうでもないらしい。