第80章 再生の道へ
「オレ…ちゃんと見えてたんだ。バク支部長とレニー支部長に助けてもらって、避難していた研究室の二階から…ちゃんと全部見えてた。南がスカルにさせられそうになってたとこも、タップがそんな南を助けようとしてたとこも」
顔を上げる。
目線を手元のグリップからジョニーに変えても視線は交わらない。
前を見つめたまま、ぽつりぽつりとジョニーはその口から感情の見えない声を零していた。
「でも…すぐに助けに行けなかった。タップは、ノアに刺されたオレを見て助けに来ようとしてくれてたのに。オレは、足が動かなかったんだ」
「…それは…怪我してたから…」
「そうだよ。怪我してた。でもそれは理由にならない。…南だってそうでしょ?オレより酷い怪我、してたのに。でも、だからタップの死は仕方ないなんて…思える?」
「………」
「南と同じだから。オレも」
ゆっくりと首を捻って振り返る。
やっと見えたジョニーの顔は、眉間に皺を寄せて泣きそうな顔をしていた。
「オレの方こそ…ごめん、南…ごめんなぁ」
「ッ…」
微かに震える声。
涙混じりのその声に、南は唇を噛み締めた。
(違う。ジョニーが悪いんじゃないよ)
そう言いたくても言葉は出てこない。
自分の行いを正当化なんてできない。
その気持ちは、きっとジョニーも同じなのだろう。
同じ思いを抱えて、同じ苦しみを背負って。
同じに後悔し続けている。
(…ああ、)
それはきっと、簡単には塞がらない心の傷だ。
「…うん」
きっとその傷を癒して前を向くには、時間がかかる。
どれくらい月日を要するかはわからない。
だけど。
「うん…私も、ごめんね…」
ジョニーの肩に手を置き触れる。
抱えている傷は、一人だけじゃないから。
彼と共に歩いていこう。
時間がかかっても、傍から見て傷の舐め合いに見えようとも。
それがきっと、タップを失った自分とジョニーの前へと進む方法なんだ。
「ごめん…」
「…うん」
肩に触れた南の手に、寄り添う温もり。
上から重ねて握られるジョニーの手は、微かに震えていた。