第80章 再生の道へ
「ジョニー!」
「え?…あっ!南!?」
キコキコと大きな薄い車輪を回しながら車椅子に乗って進む、男性にしては小柄な体。
それを廊下の隅に見つけた時、南は僅かに痛む腹部を庇いつつ足早に歩み寄っていた。
「どうして此処に…っ退院…した訳じゃ、なさそうだけど…」
久しぶりに見た同期の顔。
つい笑みが浮かびつつ、改めて見たその姿に素直には喜べなかった。
顔には大きな絆創膏。
腕や足には包帯のようなものは見当たらないが、その腹部は南同様分厚い包帯で覆われているのだろう。
何よりも車椅子で移動しているのが確固たる証拠だ。
「うん、ちょっとね。それより南に会えるなんて!体の調子はどう?」
「まぁまぁ、かな。こうして歩ける分、ジョニーよりは調子良いのかもね」
「オレより酷い怪我だった気がするのになぁ…」
「体の丈夫さはジョニーより上ですから」
思ったよりもすんなりと自然に言葉は交わせた。
それだけ彼とは長い月日を共に過ごしてきたのだ。
胸を張って笑えば、ちぇっと苦笑交じりに返される。
眼鏡の奥の優しい瞳は、涙で腫れたりはしていない。
そんな些細なことに南はほっとした。
「あれ。ジョニー…それって」
「ん?…あ、うん。仕事道具」
彼の顔から体の観察に視線を移せば、南の目に止まったのは膝に乗せられた箱。
その箱の装飾には見覚えがあった。
「なんで裁縫道具?」
メジャーやらハサミやら針やら糸やら。
エクソシストの団服の機能性やファインダーのマントのデザインなど、服飾にも手を出している科学班だからそれは仕事道具と言っても過言ではないが。
何故入院中のジョニーがそんなものを持っているのか。
「まさか…仕事してるの?…入院中なのに?」
「…あはは…」
恐る恐る問えば、言葉の代わりに愛想笑いを返された。
それが答えだ。
どうやら仕事人間なのは、リーバーだけではなかったらしい。