第80章 再生の道へ
入院してしまってからは、まだ彼とは一度も会っていない。
だからなのか、こうして物思いに耽るとつい考えてしまう。
見舞いに来てくれた研究員仲間からの話だと、リーバーは入院する程の怪我ではなかったらしく襲撃のあった次の日から、もう科学班で働いていたらしい。
なんとも彼らしいな、と思って笑みは零れたが同時に心配もした。
AKUMAにより一番の被害にあったのは科学班だった。
約半数もの研究員を失ってしまった科学班は、何処よりも人手が足りていない。
それに加え、襲撃被害の後始末もあちこち残っているはず。
自分より遥かに仕事人間なリーバーが、科学班内だけの仕事で体を休めるはずがない。
きっと周りの手伝いもしている。
体を酷使し過ぎていないか。
周りばかり気遣っていないか。
自分のことを常に後回しにする彼だからこそ、不安は募りに募った。
顔が見たい。
声が聞きたい。
話がしたい。
そう思うのに、リーバーは一度も見舞いには現れない。
きっと仕事で忙しいからだろうと、何故か言い訳のように理由付けた。
そう言い聞かせないと、なんだか不安で。
「………」
それでもこうして一人でいると、ついつい考えてしまう。
彼の顔が見たい。
彼の声が聞きたい。
言葉を交えて、自分を見てもらって。
(……触れたい)
いつものように、頭を優しく一撫でしてもらえたら。
そんな思いに浸り込んで南ははっとした。
同時に顔が熱くなる。
(な…何考えてんだろ。私)
触れてほしい、だなんて。
頭を撫でてもらうだけだと言い聞かせつつも、ぱたぱたと片手で仰ぐ顔の熱はすぐには治まりそうにない。
「───あ」
気を紛らわすように視線を上げて周りに目を向ける。
そんな南の目に唐突に映り込んだそれに、思わず声は上がった。