• テキストサイズ

科学班の恋【D.Gray-man】

第80章 再生の道へ



入院してしまってからは、まだ彼とは一度も会っていない。
だからなのか、こうして物思いに耽るとつい考えてしまう。

見舞いに来てくれた研究員仲間からの話だと、リーバーは入院する程の怪我ではなかったらしく襲撃のあった次の日から、もう科学班で働いていたらしい。

なんとも彼らしいな、と思って笑みは零れたが同時に心配もした。
AKUMAにより一番の被害にあったのは科学班だった。
約半数もの研究員を失ってしまった科学班は、何処よりも人手が足りていない。
それに加え、襲撃被害の後始末もあちこち残っているはず。
自分より遥かに仕事人間なリーバーが、科学班内だけの仕事で体を休めるはずがない。
きっと周りの手伝いもしている。

体を酷使し過ぎていないか。
周りばかり気遣っていないか。

自分のことを常に後回しにする彼だからこそ、不安は募りに募った。

顔が見たい。
声が聞きたい。
話がしたい。

そう思うのに、リーバーは一度も見舞いには現れない。

きっと仕事で忙しいからだろうと、何故か言い訳のように理由付けた。
そう言い聞かせないと、なんだか不安で。



「………」



それでもこうして一人でいると、ついつい考えてしまう。

彼の顔が見たい。
彼の声が聞きたい。
言葉を交えて、自分を見てもらって。



(……触れたい)



いつものように、頭を優しく一撫でしてもらえたら。

そんな思いに浸り込んで南ははっとした。
同時に顔が熱くなる。



(な…何考えてんだろ。私)



触れてほしい、だなんて。
頭を撫でてもらうだけだと言い聞かせつつも、ぱたぱたと片手で仰ぐ顔の熱はすぐには治まりそうにない。



「───あ」



気を紛らわすように視線を上げて周りに目を向ける。
そんな南の目に唐突に映り込んだそれに、思わず声は上がった。

/ 1387ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp