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科学班の恋【D.Gray-man】

第80章 再生の道へ



「……後悔、か」



一人その場から動かず、リーバーは足元のコンクリートを見つめながら小さな溜息を零した。
後悔なんて、もうとっくにしている。



(ジジと同じこと言われちまったな…)



どこをどう見たら長所となり短所となるのか。
自分ではよくはわからないが、どうにも自分が面倒な性格なことは自覚していた。

きっとラビなら、自分のように情けなく葛藤する前に真っ直ぐ南の元へと向かうのだろう。

タップの元へ南を連れていくあのラビの背中は、リーバーの目にしかと焼き付いて残っていた。
あんなふうに、自分も迷いなく南の傍についていてやれたら。
その体を抱いて、心を支えていられたら。






"崩れ落ちそうになるなら、いくらでも俺が受け止めるから"






以前、アジア支部に向かう途中のホテルの中でそう南に約束した。
あの時感じた思いは、微塵も変わらず自分の中に存在している。
寧ろ強くなっていると言ったっていい。

今、南はどんな顔をしているのか。
一人で必死に立とうとしているのか。
もう心の傷も治して前を見据えているのか。

…自分でさえ、まだ沢山の部下を失った痛みを未だに感じている。
完全に立ち直っているわけではないのだから。
他人に心から寄り添おうとする優しい思いを持っている南が、傷付いた心を完全に癒しているとは考え難い。

もしかしたら、今はもう自分ではない誰かに支えられているのかもしれないが。



「………」



頭に焼き付いて離れないのは、南が入院する間際まで傍についていたラビの姿。
南をラビに譲る気はない。
だが南にラビしか与えられないものがあることは、リーバーも理解していた。

自分とラビは違う。
そこを張り合うつもりはないし、真似るつもりもない。

けれど。



自分も彼のようにいられたら、と時々羨んでしまう心がある。



「……本当、情けねぇな…」



誰もいない地下階段で一人、リーバーはもう一度力なく自分を詰りつけた。

彼女の元に向かうべきか。
まだ決心はついていない。






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