第80章 再生の道へ
「…室長。南は…どんな様子でした。怪我の具合とか…体の調子は」
「………」
恐る恐る、伺うように尋ねてくる。
普段遠慮なく罵声や時には拳だって落としてくる部下である彼からは、あまり見慣れない姿。
そんなリーバーを前にコムイは眉を潜めた。
「知りたければ、自分の目で確かめに行けばいいじゃないか」
「教えてあげないよ」とはっきり告げてやれば、忽ち彼の顔は驚きに変わる。
そうやって気にしている癖に、何故行ってやらないのか。
思春期の少年でもあるまいし。
彼ももう立派な年頃の大人だ。
甘やかす気はないと、コムイは足を止めたリーバーを置いて階段を上がっていく。
「真面目なのは良いことだけどさ。そこは君の欠点でもあるよね」
「…え?」
「色々考え過ぎちゃうところだよ。物事は難しいようで簡単にできてることもある。ましてや人の心なんて不確定要素、他人が量れる訳ないだろう?」
コツリと足を止めて振り返れば、いつもより格段に低い位置にあるリーバーの顔が見えた。
少し不安の残る顔。
そんな顔を上司に曝してしまうくらい、色々と思い悩んでいるのだろう。
本当に、仕事人間と言われる程に真面目な彼らしいと思う。
「やらずに後悔するくらいなら、やって後悔すること。これ、ありがたーい上司からの助言ね」
一瞬。
苦笑混じりな優しい笑みを浮かべたかと思えば、次にはもうにっこりとコムイお得意の満面スマイルを浮かべていた。
人差し指を立ててそう伝えれば、今度は振り返らずに階段を上っていく。
その場に残されたのは、リーバー一人。