第79章 無題Ⅱ
私の心臓を握りながら、人の生死を弄ぶように楽しんでいた。
任務中の船上で出会った、"快楽(ジョイド)"と名乗っていた男性ノア。
アレンが中国で対峙したノアは、きっとそのノアだ。
アレンはそのノアの手により、心臓を貫かれて死んだ。
文字通り、"死んだ"んだ。
でも彼は生還した。
皆が一度は受け入れたアレンの"死"。
それでも新たに強いイノセンスを発動させて、彼は生還した。
穴を開けられた心臓はそのままに。
何故生きていられたのか。
それはアレンのイノセンスである"神ノ道化(クラウン・クラウン)"が、彼の体の一部となりその穴を塞いでいたから。
それは物質であるイノセンスが、自らの意志で適合者である人を助ける行為。
今までに事例のない前代未聞の症例だった。
そしてそれは、強いイノセンスとの結び付きを持てたアレンだからこそ成し得たこと。
生きる為に。
生きて人とAKUMAを救う為に。
アレンの強い"意志"が成し得たこと。
…だからね、タップ。
「生きて…ッ生きようと、して」
それはきっと私達だって不可能じゃない。