第79章 無題Ⅱ
私、これでも科学者だから。
タップのその体を元に戻す方法、見つけ出すから。
だから生きて。
生きようとして。
死から抗って。
お願い。
「とにかくその姿を、命を、繋げる方法…っ考える、から…ッ!」
「……みなみ…」
「…!」
私の声、聞こえてるんだ。
ぽっかりと空いた空洞じゃ、何を見ているかわからない。
でも覗き込んで声を上げる私に向かって、タップは確かに名前を呼んでくれた。
「うん…ッうん、南だよ…ッ此処にいるよ…っ」
手を握る。
大きな太い指の、真っ黒なタップの手を両手で強く握って。
そうして、必死に目の前の彼に呼びかけた。
「タップは、休んでて…いいから…ッ生きることだけ考えて…ッ」
お願い
消えないで
「私がタップの仕事、全部受け持つから…ッ心配、しなくていいから…ッ」
お願い
生きていて
「タップのその体も…ッ私が、ちゃんと治してあげるよ…ッ何年、かかっても…」
必死に言葉を繋ぐ。
ちゃんと伝えたくて。
ちゃんとタップに応えて欲しくて。
覚悟してる。
絶対に治してみせる。
だからタップもそれだけの覚悟で生きて。
お願い。
科学者なら、普通は非科学的なことは信じないだろうけど…イノセンスっていう特殊な物質を研究してる特殊な職場だから。
そういう非科学的なものの存在は信じてる。
霊魂やオカルト的なもの。
そしてそれは形のない人の思いも。
イノセンスという物質と人の心が強い繋がりを見せた時、エクソシストは人智を超えた力を発揮する。
それは人の意志が成せること。
〝意志〟
それはね、エクソシストだけじゃないんだよ。
私達、普通の人間だって誰しも持っているもの。