第79章 無題Ⅱ
「え…」
「タップ…?」
今、の
空耳じゃ、ないよね?
「タップ…!」
「タップ?タップ…!」
慌ててジョニーと、タップの顔を覗き込む。
ジョニーの涙をその目元の空洞に溜めて。
ぽろりと零しながら、まるで泣いているように。
剥き出しの尖った白い歯が羅列した口元。
その隙間から、タップは濁った"音"を発した。
「…ィ…イマ…」
いま?
…今?ってこと?
必死にその声を聞き逃さないように、タップの口元に耳を寄せる。
何?
ちゃんと聞いてるから。
何か伝えたいことがあるの?
なんでも聞くから。
「…イマ…生きられルナら…」
濁って辿々しい声。
それでも確かに、タップは"言葉"を口にした。
「……一生…ザンギョ…でも…いイ…やぁ…」
ざんぎょ…残業?
それって。
"…オレ…このまま眠れんなら、一生目覚めなくていいやぁ…"
夢の中で見た、過去のタップの言葉を思い出す。
休めるなら一生目覚めなくてもいいとさえ言っていたのに。
あんなに残業を嫌がってたのに。
涙を流しているような顔で、濁った声で、タップが切実に願ったのは──
「…ッ…タップ…」
"生きること"
「っ…タップ…!わた…っ私、見つけるから…!タップが助かる、方法…ッだから…!」
生きて
お願い
私やジョニー達だけじゃない。
タップ自身も縋っていた"生"。
同じことを望んでる。
そう悟った時、身を乗り出して私はタップに向かって叫び呼びかけていた。